
建設業許可を取得するとき、「一般建設業」か「特定建設業」どちらの許可を申請すればよいのか迷うことがあるかと思います。
まずは一般建設業許可を取得すれば、請け負う建設工事の金額に制限はなくなります。500万円の建設工事も5億円の建設工事も請け負うことが可能です。
それでは、どのようなとき特定建設業許可が必要となるのでしょう?特定建設業許可について詳しく見て行きたいと思います。
特定建設業許可が必要な工事
特定建設業許可は、発注者から直接請け負った(元請)工事について、総額4,500万円(建築一式工事は7,000万円 ※消費税は含まれ、元請人が提供する材料費等は含まれない)以上を下請に出して施工する場合に必要となります。
上記以外の場合(例えば請け負った工事を全て自社で施工する場合や下請工事をさらに下請に出す場合等)は、特定建設業許可は必要ありません。
特定建設業許可を取得するには
特定建設業許可を取得するには、まず2つの要件「専任技術者」と「財産」を確認しましょう。
建設業許可を取得するための要件は計5つですが、特定建設業許可ではそのうちの2つ「専任技術者」「財産」の要件が一般建設業に比べて格段に厳しくなります。
残りの3つ「経営管理責任体制」「誠実性」「欠格」については、一般建設業も特定建設業も同じです。
特定建設業の専任技術者要件
特定建設業許可の専任技術者になれるのは、許可を受けようとする営業所に常勤し、一定の資格又は実務経験を有する人です。
【特定建設業の専任技術者になれる資格】
特定建設業の専任技術者の資格は、許可業種ごとに定められており、1級の国家資格や技術士等が該当します。 国土交通省のHP専任技術者となり得る国家資格等一覧【特定建設業の専任技術者になれる実務経験】
特定建設業の専任技術者として認められる実務経験は、一般建設業の専任技術者要件を満たした上で、許可を受けようとする業種に関し、元請で4,500万円以上の建設工事について2年以上、指導監督した経験を言います。次のどちらかのケースに該当すれば実務経験で特定建設業の専任技術者となり得ます。
✓ 一般建設業の専任技術者の国家資格等+指導監督経験2年以上を有する人
✓ 実務経験10年以上+指導監督経験2年以上を有する人
【指定建設業の特定建設業専任技術者要件】
指定建設業7業種(土木工事業、建築工事業、電気工事業、管工事業、鋼構造物工事業、舗装工事業、造園工事業)について特定建設業の専任技術者になれるのは国家資格者等のみです。つまり、2年以上指導監督した実務経験があっても指定建設業については特定建設業の専任技術者にはなれませんのでご注意ください。特定建設業の財産要件
特定建設業を取得するためには、申請時直近の決算の貸借対照表において、次の①~④すべてに該当していることが必要です。
①資本金の額
資本金≧2,000万円 |
②自己資本の額が4,000万円以上であること。
純資産合計≧4,000万円 |
③流動比率が75%以上であること。
流動資産合計÷流動負債合計≧75% |
④欠損の額が資本金の20%を超えていないこと。
繰越利益剰余金の負の額-(資本剰余金+利益準備金+その他利益剰余金(繰越利益剰余金を除く。))÷資本金×100≦20% |
※④の計算式は「欠損の額」=利益剰余金がマイナス(負)である場合に、その額が資本剰余金、利益準備金、その他利益剰余金の合計額を上回る額(大雑把に言うと赤字額)があるときに使用します。繰越利益剰余金がプラスの場合や資本剰余金等の合計額が繰越利益剰余金の負の額を上回る場合は、④の要件を満たしています。
特定建設業許可の申請方法
特定建設業許可の要件を満たすことを確認しましたら、次は申請の準備です。
特定建設業許可を申請する場合、専任技術者が国家資格保有者でないときは、指導監督的実務経験証明書等の作成が必要になりますが、それ以外は一般建設業のものとほぼ同じです。
許可行政庁のHPに必要書類一覧等が案内されておりますので、確認しながら書類の準備を進めましょう。許可行政庁のHPから申請書の様式をダウンロードすることも可能です。
申請書類は正本1部、副本1部を提出します。
※必要とされる書類は許可行政庁により小さな違いがございます。
特定建設業許可の申請区分
【知事許可・大臣許可】
知事許可:ひとつの都道府県にのみ建設業の営業所がある場合
大臣許可:複数の都道府県に建設業の営業所がある場合
【業種別許可制】
建設業許可は、29種類に分類された建設工事の種類ごと(業種別)に行います。同時に2つ以上の業種の許可を申請することも、ある業種は一般建設業を申請し、他の業種は特定建設業を申請することも可能です。
【申請区分】
新 規 | 現在どの許可行政庁からも有効な許可を受けていない者が、許可を申請する場合 |
許可換新規 | 知事許可から他都道府県の知事許可へ、許可を換える場合 大臣許可から知事許可へ、許可を換える場合 知事許可から大臣許可へ、許可を換える場合 |
般・特新規 | 一般建設業許可のみを受けている者が特定建設業を申請する場合 特定建設業許可のみを受けている者が一般建設業を申請する場合 |
業種追加 | 一般建設業を受けている者が他の一般建設業を申請する場合 特定建設業を受けている者が他の特定建設業を申請する場合 |
更 新 | 現在有効な許可を継続する場合 |
特定建設業許可申請書類の提出先
特定建設業許可も一般建設業許可も、大臣許可・知事許可の区分により申請書類を提出します。
☑知事許可の場合:主たる営業所の所在する都道府県へ提出します。
☑大臣許可の場合:主たる営業所の所在地を管轄する地方整備局へ提出します。
申請の受付後、知事許可の場合は約30日、大臣許可の場合は約3カ月、審査期間を要します。
特定建設業許可の申請手数料
一般建設業、特定建設業別に、次の申請区分に応じて手数料を納入します。
【知事許可の場合】
新規、許可換新規、般・特新規:9万円
業種追加、更新:5万円
(納入方法は、都道府県が発行する収入証紙による場合と現金による場合とがあります。)
【大臣許可の場合】
新規、許可換新規、般・特新規:15万円
(納入先は、本店所在地を所管する地方整備局等を管轄する税務署です。)
業種追加、更新:5万円(収入印紙で納入。)
知事許可の一般建設業と特定建設業を同時に新規申請する場合の手数料は、
9万円+9万円=18万円となります。
知事許可の一般建設業と特定建設業を同時に更新申請する場合の手数料は、
5万円+5万円=10万円となります。
※手続きを行政書士へ依頼する場合、行政書士への報酬が別途必要です。
特定建設業許可取得にあたって考慮したいこと
特定建設業許可の制度は建設工事の適正な施工を確保し、発注者を保護することに加えて下請業者を保護するための制度です。
そのため、更新時にも厳しい要件を満たしている必要があります。もし要件を満たしていない場合は、更新することができず、一般建設業許可に換えたりしなければなりません。
特定建設業許可を取得し維持していくためには、次の点に注意しましょう。
更新時にも財産要件を満たせるか
更新直前の決算で、①~④の財産的基礎要件を満たしている必要があります。
①資本金の額が2,000万円以上であること。
資本金≧2,000万円 |
②自己資本の額が4,000万円以上であること。
純資産合計≧4,000万円 |
③流動比率が75%以上であること。
流動資産合計÷流動負債合計≧75% |
④欠損の額が資本金の20%を超えていないこと。
繰越利益剰余金の負の額-(資本剰余金+利益準備金+その他利益剰余金(繰越利益剰余金を除く。))÷資本金×100≦20% |
複数の技術者を確保できるか
特定建設業許可を取得するためには、営業所に専任の技術者が必要でした。工事の規模が大きくなると、営業所に専任技術者を置くと同時に、工事現場には専任の監理技術者を置かなければならない場合が多くなります。
営業所の専任技術者と専任の監理技術者は兼任することができませんので、より大きな工事を受注し施工するためには複数の技術者が必要です。
また、特定建設業許可の更新時にも専任技術者の要件を満たす人が必要ですので、技術者について安定した雇用状態を保つことも重要になります。